父が亡くなった。久しぶりに顔を合わせた麟太郎と美也子の姉弟は、通夜の席に臨む。しかし、美也子が予約していたふるまいの仕出しが届かない。母のアキコが仕出しを断っていたのだ。アキコはふるまいの料理は故人の遺言で自分が作ると言う。 そして最初にできてた料理は目玉焼きだった。麟太郎はその目玉焼きに覚えがあった。それは父が新しい母を連れてきた日の記憶で、盲腸で入院した母の代わりに父が子供たちに初めて作った料理だった。次に出てきた味噌汁は、合わせ味噌の味噌汁で、家庭の味をめぐって赤味噌か白味噌かでひと悶着あった味噌汁だった。いろんな料理を通して家族はだんだん一つになっていく。麟太郎と美也子は、新しい兄・シュンと、まるでもとからの兄弟のように親しんでいた。そんなときが5年続いたある日、兄が突然家を出ていく。なにも知らされることのなかった麟太郎と美也子には、到底理解できることではなかったし、家族というものに対する不安を心に残すことになった。 7年間音信不通だったその兄が、父の通夜の席に戻ってきた。兄は父が家で最後の食べたというすき焼きを作り始める。
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公開年月日:2019-11-01